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2007年12月21日

21a: ロンシャン

「私はこの礼拝堂を建設するにあたり、沈黙の場、祈りの場、平和の場、そして内なる喜びの場を創造したいと望みました。」 ル・コルビュジェ
(1955年6月、ロンシャン大聖堂の献堂式で大司教に鍵を渡す際、述べた言葉)

ロンシャンの礼拝堂
↑ロンシャンの礼拝堂(教会)。正式名称は、シャペル・ノートルダム・デュ・オー。

ロンシャンの礼拝堂
↑ロンシャンの礼拝堂のショップ兼入場券売り場に展示されていた絵。

 以下は、2007年12月21日(金)にロンシャンの礼拝堂を訪れたときの詳細な記録です。

ミュルーズ MULHOUSE

2007年12月21日 最高:3℃ 最低:-6℃ 天気:晴

地球はまあるいよ 12月21日(金)。快晴。
 この日はいよいよ、この旅行後半のヤマ場!
 これから目指すのは、ル・コルビュジェ先生が晩年につくったロンシャン礼拝堂(ロンシャン教会)です。前々から行きたいと思っていたのですが、『河本ぼあらの 地球はまあるいよ - 女ひとり世界一周旅日記』を読んで以来、さらにその願望がUP!ここを訪れるにあたって■■と●●は、日本から綿密な(?)計画を練ってきました。

(1) ロンシャン礼拝堂は、最寄りのロンシャン駅からかなり坂を上った丘の頂上にあるので、徒歩で目指す場合、リュックはどこかに預ける必要があります。
(2) ロンシャン礼拝堂に向かう途中の駅、ベルフォール駅とロンシャン駅にはコインロッカーも荷物預かり所もないので、荷物はホテルに預けるしかありません。

 そのため、コルマール・ベルフォール・バーゼルのいずれからもアクセスの良いミュルーズに宿泊すればいちばん効率がよいと考え、昨日はミュルーズのホテルに泊まりました。

ル・コルビュジェDVD-BOX 本日は、『朝ミュルーズのホテルに荷物を預ける → 列車でロンシャン駅まで行く → ロンシャン礼拝堂を訪れる → 列車でミュルーズまで戻り荷物を受け取る → それから列車でバーゼルに向かう → バーゼルを観光する』という予定。
 また、昨日ミュルーズ駅に着いたときに窓口で買っておいた切符は以下のとおりです。
 ミュルーズ → ロンシャン (1人10.9ユーロ・1,798円)
 ロンシャン → バーゼル (1人14.8ユーロ・2,442円)

 …と、ここまでが、ロンシャン礼拝堂を訪れるための予備知識(概要)です。具体的な電車のダイヤや、礼拝堂までの道のりなどは、以降の旅行記で詳しくつづりたいと思います。

 12月21日(金)、6:05に起床。この旅行で2度目の貼るオンパックスを使用し、防寒対策は万全(?)。リュックをフロントに預けて、ミュルーズのホテルを6:45に出発。
 水が凍っているローヌ・ライン運河沿いの道を東へ歩き、徒歩13分でミュルーズ・ヴィル駅(Gare Mulhouse Ville)に到着。
 切符売り場の中だけ暖房が効いていたので、その中でしばし待ち、出発時間が近づいてから駅のホームへ。

ベルフォール駅ベルフォール駅
↑ベルフォール駅で、corail(左)からter(右)に乗換えました。↑

corail ミュルーズ・ヴィル駅 7:20発 → ベルフォール駅 7:45着 (予定)
corail ミュルーズ・ヴィル駅 7:20発 → ベルフォール駅 7:46着 (実際)
ter ベルフォール駅 7:56発 → ロンシャン駅 8:15着 (予定)
ter ベルフォール駅 7:57発 → ロンシャン駅 8:15着 (実際)

 午前中にロンシャン礼拝堂を訪れようと思ったら、↑このダイヤの列車に乗るしかありません。ベルフォール駅からロンシャン駅へ向かう列車は、超ローカル線なので、1日に3本だけなのです。
 7:20にミュルーズ・ヴィル駅を出発し、途中ベルフォール駅(Gare Belfort)で乗換え、8:15ロンシャン駅(Gare Ronchamp)に到着。

ロンシャン RONCHAMP

ロンシャンの礼拝堂(ロンシャン教会)がある小さな町。
2007年12月21日 最高:1℃ 最低:-13℃ 天気:晴

さあ行こう! - 20世紀の遺跡・ロンシャンの礼拝堂への道

SNCF terロンシャン駅
【右】無人駅のロンシャン駅に、8:15到着。↑

 ロンシャン駅は、列車を待つ人が座るための小さなボックスと、ホームとホームをつなぐ歩道橋のほかには何もない、無人駅でした。terから下車したのは、■■と●●のほかには、犬を連れた女性のみ。

ノートルダム・デュオーレストラン
↑【左】案内板に従って進み…。  【右】緑色の屋根のレストラン奥の小道を左へ。↑

 ホームを降りると『シャペル・ノートルダム・デュ・オー(Chapelle Notre Dame Du Haut)』という案内板が、左方向(東方向)を差していました。ノートルダム・デュ・オーとは、ロンシャン礼拝堂の正式名称。その方向へ。

 8:17、太陽はまだわずかに顔を見せる前。落ち葉はしっとりと地面に同化し、木の枝には1枚の葉もありません。色のない(あるけど薄い)冬の風景は、どこまでも寒々しく感じました。

 ゆるやかな下り坂のあと、意外に交通量の多い車道脇の歩道を3分ほど進んでから、案内板に従って左折(緑色の屋根のレストランが目印です)。あとは、1本道を歩いていくのみでした。無論、その道は上り坂ですが、登山というほどではなく、ハイキング気分で進める勾配でした。


↑【左】寒さを物語る落ち葉。  【右】煙突と朝日。心にしみる風景。↑

「憧れーの ロンロンロンロンローンシャーン教会ー♪」
「ロンドン急行(井上陽水)でしょ♪」


↑【左】8:33。1つ先の丘のてっぺんに見えた礼拝堂。  【右】朝日の注ぐ山道。↑

 8:30を過ぎると、坂道に朝日が注ぎ込むようになり、仮死状態だった木々に再び命が吹き込まれました。ロンシャン礼拝堂は10:00オープンなので、急いで坂を上る必要はありません。写真を撮りながらのんびり進みました。

眺望
↑9:07。ロンシャン礼拝堂入口ゲート前からの眺望。

 9:00にロンシャン礼拝堂に到着。当然まだオープンはしていません。
 そして『10:00オープン』というのは、礼拝堂の建物内部に入れるようになるのが10:00という意味ではありません。10:00までは、礼拝堂から少し下がったところのゲートが閉まっているので、建物内部はもちろん、礼拝堂の外周に近づくことすらできないのです。
 ゲートの脇には、ショップ兼入場券売り場(小屋)がありましたが、そこもまだクローズド。

「ここにヴァンショー(ホットワイン)が売っていればなぁ…。」

 しばし、たちこめる霧の中に連なる山々を眺めたり、冷たい石の上に座ってクロワッサンを食べたりして、時間が過ぎるのを待ちました。

モニュメントロンシャン入口ゲート
【右】左の建物がショップ兼入場券売り場。奥にはあこがれのロンシャン礼拝堂。↑

 その間、9:35までに、自動車が4台、坂道を上ってきて駐車場に停まりました。そのうち3台は中から観光客が出てきて、オープンが10:00であることを知ると、待つことなくそのまま自動車に乗って帰ってしまいました。駐車場に残った1台は、ロンシャン礼拝堂見学の現地ツアー客を乗せたマイクロバスでした。
 9:35に、5台目の自動車が到着。中から出てきたのは、礼拝堂の入場券売り場のスタッフ(男性)でした。
 男性は、9:40にショップ兼入場券売り場を開けて、10:00まで中で待たせてくれました。その中は、たんなるショップではなく、ル・コルビュジェとロンシャン礼拝堂に関する展示--ロンシャン大聖堂の模型、建築中の写真、王冠、手紙など--がありました。 ショップでは、ロンシャン礼拝堂の本だけでなく、建築関係の本がいくつか売られていて、その中には安藤忠雄の作品集もありました。


↑ショップ内の模型は、かなり精巧に作られていました。↑


↑ショップ内の展示。建築中の写真など。

 9:54、入場券(1人3ユーロ・495円)を購入。同時にゲートもオープンしたので、ゲートをとおり、少しの坂道を上ってあこがれのロンシャン礼拝堂へ!


↑【左】入口では、猫のル・コルビュジェがお出迎え。  【右】9:56、ゲートを通過。↑

生きている建築

 坂道を上り終えると、抜けるような青空の下、そして冬の控え目な芝生の上に、白い建物が眼前に広がりました。
 まず目にすることになったのは、ロンシャン礼拝堂の南側。無数の小さな窓があり、その屋根のかたちはまるで宇宙船のよう。

ロンシャンの礼拝堂・南面
↑9:58。まるで宇宙船のような外観のロンシャン礼拝堂の南面。

 この外観は、今までにもいろいろな本やブログで見てきましたが、やはり実物は違います。
 1歩ずつ右方向へ歩くたび、少しずつ表情を変えてくれるので、まずは中に入らずに外周をじっくり見ることに。特に屋根は、見る角度が少し変わるたびに、実際にどんどん変化しているように感じました。ル・コルビュジェが言った『生きている建築』とは、精神性と抒情性を併せ持った、人を感動させる建築という意味で使われた言葉だとされていますが、この屋根の形状変化もまた、まさしく生きているかのようでした。

 ■■と●●の足は無意識に、礼拝堂を反時計回りに進むよう決定。

 東南側からの眺めは最も均整が取れており、おそらくこの角度が、写真で最も目にするアングルでしょう。すなわち、晴天の日にロンシャンの礼拝堂を訪れる場合、東南から日光が注がれる午前中の訪問が望ましいと言えます。


↑【左】9:59。ロンシャン礼拝堂の東南側。  【右】10:00。雲ひとつない晴天。↑

 東南側からの眺めは、小さな窓からマリア像が見えるほかは、南側からの眺めとそれほど印象的に変わりはないのですが、さらに少し足を右方向に進めて、礼拝堂の東側に立つと、これまでとはずいぶん趣きが変わって見えます。これは、この方角から屋根を見ると、宇宙船ではなく、かつおぶしのように見えるからでしょう。

「ロンシャンの礼拝堂の屋根は、その色と形から、船のボディやかつおぶしのように見えるけれど、実はこの屋根の素材は、打ちっ放しコンクリートなんだよ。」
「こんなにも温かみのある打ちっ放しコンクリートには、ついぞお目にかかったことは無かったね。」

東側
↑10:07。東面。影はどこまでも長く、壁面中央の小さな窓にはマリア像。

 東北東側には、礼拝堂から適度に離れて、階段ピラミッド型のオブジェがあるので、それに上ると立体的に礼拝堂を眺めることができました。

東側
↑10:05。ピラミッド型のオブジェの上から撮影。

 北側は、窓がたくさんありますが、逆光のためうまく撮影はできませんでした。
 西側には、窓はありません。大きな柱に挟まれて、豚の鼻の形をした雨樋(あまどい)がありました。礼拝堂の屋根には傾斜があり、東よりも西側のほうが低くなっているため、この雨樋をとおして屋根に注いだ雨水が、下の池にたまる仕組みになっていました。雨樋に関しては、松田さんのブログ『Ryuji Matsuda Blog』、yonedy7さんのブログ『豆っ - 本日2本目』や、jojo天使さんのブログ『jojo天使とパリつれづれ - 新年ル・コルビュジエ詣で』に詳しく書かれています。


↑【左】手を振る人。  【右】南側の正面入口のドア。↑

ロンシャンの礼拝堂・南側
↑10:21。無数の小さな窓がある南面。

 1周したあと、南側の入口から礼拝堂内部へ。内部には、マイクロバスのツアーで訪れたフランス人が5名ほどいました。


↑【左】10:29。内部は別空間。  【右】10:31。祈りの場、瞑想の場。↑


↑10:38。内側から見ても存在感がある、コンクリート打ちっ放しの天井。

 フランス人ツアー客はすぐに観光を終えて礼拝堂を後にし、10:30を過ぎて礼拝堂に残ったのは、■■と●●と、他1名のみ。冷気と静寂が、ほとんど貸し切り状態の礼拝堂内に充満してきました。
 外から見ると不思議な配列に思えた、南側の壁の小さな窓。内部から見た南側の窓の光はとてもきれいで、想像以上に存在感がありました。

ろうそく
↑【左】ろうそくならば赤色の光を。  【右】柱の上から柔らかな光を。↑

 はじめ、10:20に内部を見たときも美しかったのですが、11:30に再度内部に入ったときには、観光客がほとんどいなくなった上、太陽が南側へ移動してきた影響で、いくつかの窓から光のカーテンが礼拝堂内部へ注ぎ込んでいて、非常に神秘的でした。


↑11:41。内部の南面。光の前に、人間はかくも無力。

「ほぼ冬至の、低くてまぶしい光が、絶妙な角度で注ぎ込んでくるね~。」
「雨なら雨樋からしたたる雨水を楽しめたかもしれないけれど、やっぱり今日は晴れていてよかったなぁ。この光は、優しくて、力強くて、知的で、直感的で。」

ル・コルビュジェ 座席と十字架の彫刻は、ジョゼフ・サヴィナが手がけたもの。

 この日は、正午になっても、右の本の表紙の写真と違って、張り出した屋根が外壁の上部に影をつくることはありませんでした。
 本日は12月21日。冬至近辺で太陽が低く、日差しの角度が低いため、このように白い漆喰の壁全面が白いまま保たれ、そして南面上部の窓も屋根の陰にならずに、いっそうきれいに内部に光が注いだのでしょう。
 ちなみに、文庫本より大きく、PHP新書より小さいサイズであるこの本(『ル・コルビュジェ - 終わりなき挑戦の日々』→)には、ル・コルビュジェの建築や思想、そして人生が詰まっています。本格的でありながら分かりやすい文章、きれいなカラー写真、本人のメモ書きやスケッチが、各々のページにうまくレイアウトされているので、ル・コルビュジェの入門書としておすすめの1冊です。

ロンシャン
↑10:45。京都に住んでいたことがあるというフランス人に撮影してもらいました。
冬至近辺なので、張り出した屋根が外壁の上部に影をつくっていません。


↑『ル・コルビュジェ - 終わりなき挑戦の日々』。写真、メモ書き、スケッチなどが満載。

 2006年8月に訪れたマルセイユのユニテ・ダビタシオンは、合理性と機能性を追及したモダニズム建築の傑作。そして、ユニテと同じくル・コルビュジェが設計したものの、合理性という言葉と対極にあるロンシャン礼拝堂。
 しかし、意外にも設計された時期は近く、ユニテは1945年(ル・コルビュジェ58歳)設計、1952年(65歳)完成。そして、ロンシャン礼拝堂は1950年(63歳)から設計だけで3年費やし、1955年(67歳)完成です。おそらく、この5年の間にル・コルビュジェの内界で革命的なことが起きたわけではなく、自由な発想を持ち続けた彼の脳内には2つの作品が同居していたのでしょう。勝手な想像ですが。

 ■■と●●の他に1人残った人は、京都に2年間住んでいたことがあるというフランス人カメラマンでした。キヤノンのEOSなど、一眼レフを何台か持っていて、ル・コルビュジェの傑作を黙々と撮影していました。

エスプリ・ヌーヴォー! Esprit Nouveau!

「言葉や思想は大事だけれど、それに縛られすぎてはいけない。…ル・コルビュジェは、このロンシャン礼拝堂で、そのことを表現したかったのかもね。」

 それまで、言わば『モダニズム建築推進委員会の会長』だったル・コルビュジェが、ロンシャン礼拝堂をつくるのは、もし彼が凡人ならそうとう覚悟が必要だったことでしょう。しかし、彼の建築に対する情熱は、肩書きだとか建前だとかを、はるかに上回っていたのです。
 ロンシャン礼拝堂は、人間の想像力の可能性を、素晴らしさを教えてくれました。

ロンシャン礼拝堂の壁しっくい
↑【左】11:40。礼拝堂の漆喰の壁を接写。『ヨーグルト?いいえ、ケフィアです。』
【右下】南面の入口から外を撮影。↑

 ■■が子ども時代に読んだ漫画の、ぼんやりとした記憶ですが…、赤塚不二夫の『天才バカボン』で、玄関に入るとまずトイレがあって、ほかにも奇妙なところがいっぱいある家の話がありました。

ル・コルビュジェ 当時小学生だった■■は、『バカボン建築』にインスパイアされ、自分でも奇抜な家の図面を考えてみようと思い、紙と鉛筆でトライしましたが、これが難しいのなんの。どんなにがんばっても、たいして面白い家にならないのです。

 このように(?)、人間の想像力というものを膨らませるという作業は、容易なことではありません。安藤忠雄も、著書『ル・コルビュジェの勇気ある住宅』の中で、『創造とは、ゼロから生まれるものではない』と述べています。そして、想像力だけでなく実行力もなければ、この偉大な礼拝堂が建つことはなかったのです。
 ちなみに『ル・コルビュジェの勇気ある住宅』には、安藤忠雄から見たル・コルビュジェが丹念に書かれています。安藤忠雄曰く、ロンシャンの礼拝堂は『20世紀の遺跡』であり、『ル・コルビュジェの芸術家的な一面が爆発的に開花したもの』。
 安藤忠雄は、1965年にここを訪れたとき、1日目と2日目は光が襲いかかってきて内部には1時間といられなかったそうです。3日目になってようやく、神々しさを感じることができたとのこと。また、巻末の年表は、シンプルながら良くまとまっています。

ルコルビジュエの勇気ある住宅
↑『ル・コルビュジェの勇気ある住宅』。

「ル・コルビュジェの、情熱を源とした想像力と実行力こそが、彼の天賦の才能そのものだったんだろうね。」
「ロンシャン礼拝堂は素晴らしい創造物だけど、どことなく、子どもの頃に遊んだ公園の遊具に似た懐かしさを感じたよ。」
「晩年のル・コルビュジェもきっと、子ども時代に思いを馳せながらこの礼拝堂を設計したのです。なぜなら、ロングアイランドの海岸で拾った蟹の甲羅から、この屋根のアイディアを得たくらいだから。」
「生涯、エスプリ・ヌーヴォー(新しい精神)を持ち続けていたんだね。」


↑11:50。人間は奇跡を起こすことができる。

 時間と体力が許すのであれば、少なくとも往路は、徒歩でロンシャン駅からロンシャン礼拝堂へ向かうことをおすすめします。
 欧州全土を自転車や徒歩で旅している人に比べれば、『なんちゃって』な自己満足感に過ぎないのかもしれませんが、例えロンシャン駅からであっても坂道を歩いて到達するのと、タクシーで到達するのでは、達成感に少なからず差が出ると思います。
 そう、ル・コルビュジェがこの丘の頂上に礼拝堂をつくったのは、単なる偶然ではないのですから。


↑【左】ショップで売っていた本。ANDOがありました。  【右】12:00。↑

 12:05、ロンシャン礼拝堂のスタッフに「よいクリスマスと新年を!」と言われて別れ、ロンシャン駅に向かって歩き始めました。帰りは下り坂。25分でロンシャン駅に到着しました。
 短期詰込み型の旅行では、疲労のクレッシェンドと、感動のデクレッシェンドが起こりやすいので、それにどう対応するかがポイント。その意味でも、クリスマスマーケットが続いて若干マンネリ化していた旅行9日目の本日、ロンシャン礼拝堂を訪れることができてよかったです。


↑【左】12:14。  【右】12:50。ベルフォール行きのterがロンシャン駅到着。↑

 12:53発予定の電車は予定より1分早くロンシャン駅を出発。わずか1両の電車だけの列車でした。

ter ロンシャン駅 12:53発 → ベルフォール駅 13:14着 (予定)
ter ロンシャン駅 12:52発 → ベルフォール駅 13:14着 (実際)

ベルフォール BELFORT

2007年12月21日 最高:1℃ 最低:-13℃ 天気:晴

 ベルフォールでは、乗換え時間が38分あるので、『takapyonaの美味的生活 - ロンシャン教会とベルフォール』で紹介されていたベルフォールのライオンを見に行きました。

バルトルディ これは、ニューヨークにある自由の女神の作者・バルトルディがつくったライオン像。崖上の大聖堂の下に、けっこうな大きさで存在していましたが、あいにくの逆光でした。
 ちなみに、ロンシャン礼拝堂への行き方として、このベルフォール駅からタクシーに乗って訪れるという方法もあります。片道25分、30ユーロ程度。
 超ローカルなロンシャン駅に比べれば、ベルフォール駅ははるかに大きくて電車の発着本数も多いので、電車のダイヤにそれほどナーバスにならなくてすむのがメリットです。
 ベルフォール駅13:52発予定の列車は、出発が遅れていて、13:58発。行きはミュルーズ~ベルフォール間がcorail(コライユ・直通)だったので所要26分でしたが、帰りはterで各駅停車(6駅停車)なので所要36分。しかも、列車はめずらしく混んでいました。車内には、マリエに似たフランス人学生や、中島美嘉のメイクを真似している(?)フランス人学生がいました。そうまでして、ここがもはや南ドイツではないことを教えてくれなくてもよいのですが。

ter ベルフォール駅 13:52発 → ミュルーズ・ヴィル駅 14:30着 (予定)
ter ベルフォール駅 13:58発 → ミュルーズ・ヴィル駅 14:34着 (実際)

ミュルーズ MULHOUSE


2007年12月21日 最高:3℃ 最低:-6℃ 天気:晴

 14:34、ミュルーズ・ヴィル駅に到着。せっかくなので、昨夜訪れたレユニオン広場の大聖堂や市庁舎を見るルートで、ホテルを目指しました。ホテルで預けておいたリュックを受け取り、再び駅へ。


↑【左】ローヌ・ライン運河。  【右】昼のサンテティエンヌ大聖堂。↑

 15:00でもローヌ・ライン運河は凍ったまま。その上を鳩が歩いていることからも、それほど薄い氷ではないことが伺えました。

ter ミュルーズ・ヴィル駅 15:47発 → バーゼルSBB駅 16:09着 (予定)
ter ミュルーズ・ヴィル駅 15:53発 → バーゼルSBB駅 16:15着 (実際)

 青く美しいノエル(クリスマス)を堪能できたフランス・アルザスともこれでサヨナラ。旅行はいよいよ終盤へ突入。
 ミュルーズからバーゼルまで、ローカル線(ter)でわずか22分の移動ですが、この間に国境を越えました。


↑【左】マンションの建築も進むミュルーズ。  【右】SBBの座席はほぼ直角。↑

 この旅行4度目の国際列車。この列車は、フランス国鉄(SNCF)ではなくスイス国鉄(SBB)の車両でした。スイス国鉄の座席は、背もたれが直角すぎて、なんだか座り心地がいまいち。

「人間工学に基づいていませんね。ル・コルビュジェ先生が泣きますよ。」
「モデュロール兄弟も泣きますよ。」

 スイスはEUに加盟していませんが、列車がバーゼルに到着するまでパスポートのチェックはありませんでした。ロンシャンからバーゼルまで、1人14.8ユーロ(2,442円)。

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この一覧は、次のエントリーを参照しています: 21a: ロンシャン:

» ロンシャン教会とベルフォール 《 ロンシャン and ベルフォール in フランス 》 送信元 takapyonaの美味的生活
本日(2006/3/17)は、フランスのディジョン(Dijon)→ロンシャン(Ronchamp)→ベルフォール(Belfort)→スイスのバーゼル(Bas...

コメント (16)

こんばんわ。先日はコメント、TBを有難うございました。

先程、夫とこちらのロンシャン記事を読ませて頂いたのですが、写真もル・コルビジェ建築についての詳しいまとめも、感想も何もかも素晴しい記事だと思いました。
ル・コルビジェ関係の本も何冊も紹介されていてい、建築にも大変お詳しいのではないかとお見受けしたのですが、そういった関係のお仕事をなさっているのでしょうか?

夫は、迫力ある漆喰の壁のアングルに、「うーん、これはすごい。」とまたしてもうなっておりました。
私は電車の中の写真が、懐かしかったです。
これらの写真は一眼レフで撮影されているのでしょうか?

電車時間の(予定)と(実際)も、ヨーロッパの電車の微妙な遅れが垣間見れて楽しいです。

takapyonaさん、コメントとトラバありがとうございます!
ロンシャンの礼拝堂を訪れるにあたって、ル・コルビュジェ関連の本に少しだけ目を通そう思ったのですが、読めば読むほどル・コルビュジェに興味がわき、あれよあれよで8冊ほど読んでしまいました(^.^)。上で紹介したものは、その中で特におすすめの2冊です。
上の記事は、私のにわか知識の集大成(?)であり、特に建築とは関連のない仕事をしています(#^.^#)。takapyonaさん夫妻にご評価いただき、電車のダイヤなど細かいところにも注目してもらえ、とてもうれしいです。がんばってまとめた甲斐がありました~♪
ロンシャンの礼拝堂、そしてル・コルビュジェの素晴らしさは、私のような素人に興味を持たせ、そして文句なしに感動させるところにあるのだなと思いました。
2006年以降の旅行の写真は全て、富士フイルムのFinePix F11というコンパクトデジカメを使用して撮影したものです。
それでは、旅行好きのご主人にもよろしくお伝えください♪

はじめまして。コメント、トラバありがとうございます。
ロンシャンの記事、読ませていただきました。
懐かしいです。思い出してゾクゾクします。

ほんと、これぞ旅人の為になるサイトですね!

旅の臨場感が伝わってきますよ。
そして、ヨーロッパの国々の記事を読みふけっています。笑
少しづつ読破したいと思ってます。

記事を読みながら、実はもう妄想の中で、僕は旅してます。笑

松田さん、コメントありがとうございます!
この記事を作成中、私もロンシャンの礼拝堂を思い出して身震いしました。
これから行く人の参考になるとともに、同じ場所に訪れた人と記憶を共有するのに役立つのも、サイト作成の魅力ですね。
もともとは思い出の備忘録として始めた当サイトでしたが、多くの人に支えられ、今では私たち夫婦の大きな楽しみの1つとなっております。

松田さんは今頃、イマジネーションの中でどちらをご旅行されているのでしょうか?(^_^)
よろしければまた、その旅行の感想などお聞かせください。

松田さんのロンシャンやサヴォア邸の記事の続きも、楽しみにしています♪
それでは、失礼します。

nob:

はじめまして。
ブログに書き込むのが初めての初心者です。
私も昔からロンシャンに憧れて行ってみたいのですが機会がありません。
ロンシャンのステンドグラスから差し込む光を体験してみたくて、文献や写真を元に自分のサイトでバーチャル空間にモデリングしてみました。まだ不完全です。実物を見たことがないのでいいのか悪いのかもわかりません。
できれば、実際に行ったことのある人にご意見を伺いたく書き込みました。CGにはまだ家具もないし材料の選択もまだまだですが、これからデベロップしていきたいです。
感想などありましたらよろしくお願いします。

nobさん、はじめまして。『初』コメント、ありがとうございました。
サイトを拝見しました。すごい技術に感心しました!
座席や十字架が配置されるのが楽しみです。

南面の窓からの光は、ピカソの絵のように自由でカラフルで、不規則に並んでいながら、全体の調和が見事にとれているなぁと感じました。
窓のくぼみや壁が受けている光は、蛍光灯より白熱灯に近い風味だった気がします。
ただ、その存在感は、私の語彙で表現できる範疇をはるかに超えていたため、申し訳ありませんが、論理的にいろいろ指摘することはできません。記事中の光に関する記載が少ないのも、そのためです。

今頃になってこんなコメント入れてゴメンなさい。
ロンシャンの教会は1990年位に行ってきました。駅からタクシーで乗っていき、見学の間、待っていてもらいました。先日、写真の整理をしていたら、ロンシャンの教会の中の写真が一切なかったのに気が付きました。当時、まだ、教会の中を写すことを躊躇してしまって撮らなかったので、後悔しています。
とってもきれいなお写真を拝見していたら、また行ってみたくなりました。

夫婦ともかっぱさん、はじめまして。
古い記事へのコメントも、大歓迎です。どうもありがとうございます!
夫婦ともかっぱさんは、ヨーロッパのかなりマイナーな土地も多く訪れているのですね。サイトの写真、イタリア、スペイン、ポルトガルなどが充実しているので、とても楽しく拝見いたしました。

ロンシャンの礼拝堂。
1990年に訪れたのですね。当時は情報が少なくて大変だったのではないでしょうか。礼拝堂は、当時と変わることなく、いつでも夫婦ともかっぱさんを待ってくれていると思います。
それでは、これからもよろしくお願いします!

YNWA:

はじめまして。

今月末、
念願かなってロンシャンを訪れることになりました。

写真等、素敵でとても参考になります。
私もミュールーズから向かう予定です。

一つ質問をさせてください。
礼拝堂はお休みの曜日などはあるのでしょうか?
かなり窮屈な旅程を予定しておりまして、
訪れることができる日が、一日に限られています。

礼拝堂にメールを送ってみたのですが、
私のフランス語が難解^^;なせいかなかなか返事が。。。

ご教授いただけますと幸いです。

YNWAさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

礼拝堂の定休日は、私の記憶では定かではありませんが、このサイト↓によれば、1月1日以外は毎日見学できるとのことです。
http://www.geocities.jp/soleil_kei/ronchamp/ronchamp.html
改修工事やストなどがあった場合は臨時閉館も考えられますが、2月下旬でしたらおそらく10時から16時まで開いていると思われます。

ですが、念には念を。万全を期すために、出発前に最新の情報をきちんと確認したいものですよね。
ロンシャンの礼拝堂にメールを送っても返事がないようであれば、ベルフォールの観光案内所にメールを送ってみてはいかがでしょう?
http://www.ot-belfort.fr/home.php?langue=2
tourisme90@ot-belfort.fr

それでは、良いご旅行を!
また何か質問がありましたら、遠慮なくしてください!

YNWA:

礼拝堂行ってまいりました!

結局、
礼拝堂のお休みの日程は、
旅前には確認できませんでしたが、
無事に観覧することができました。

当日の礼拝堂は雪が積もっていてとても静かで素敵でした。

お礼が遅くなってしまいましたが、
本当にありがとうございました。

YNWAさん、おかえりなさい!&どういたしまして。

1月に放送されたテレビ東京系列『地球街道』。
中村江里子さんと雨宮塔子さんの2人が、マティスのロザリオ礼拝堂を訪れたところ、改装中で中に入れず、日を改め訪れなければなりませんでした。
同じフランスのため、似たようなことがないか少し心配でしたが、無事に見学できたようで、何よりでした。

雪の礼拝堂もまた、りりしく美しかったことでしょう。

うっちぃ:

女子美術の講義でロンシャンの教会に雷にうたれたようになりました。
10年前に、フランスのパリからローマ、フィレンツェ美術観光に、まわりましたが、私も、友人も病気で入院仲間でいって体力とお金の限界を感じあきらめましたが、貴方のブログを読み私も歩いて行こうとおもいます。駅からですよ。
今は、ジュネーブにいます。
友人の部屋に居候していて、仕事にきりがついたら行く決心がつきました。ありがとうございます。

はじめまして^^*

以前旅先でテレビを見ていたら…
コルヴィジュエの特集番組をやっていました

わぁ~~(///∇//)
って思わずにはいられなかったデス

本物を見に行かれたのですね^^*
すごいです~♪♪

ロンシャン教会は素敵過ぎ(〃∇〃)
いっぱい紹介してくださってありがとうございました!!

私もブログを持っているので、その内コルヴィジュエを
紹介したいなぁって( ´艸`)お写真素敵だからお借りしたいです!!

初めましてでお邪魔しましたm(_ _ )m

かたさこ:

はじめまして
ロンシャンの礼拝堂の写真を探していて、このページにたどり着きました。

最初の写真を利用させていただけませんでしょうか?

利用内容などは、また連絡させていただきます。

よろしくおねがいします。

yamamura:

はじめまして
ロンシャンの礼拝堂の写真を探していて、このページにたどり着きました。
このページの最初の写真を、使用させていただくことは可能でしょうか?

突然で恐縮ですが、お返事お待ちしております。

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